千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

ソードアート・オンライン1 アインクラッド

 「そういえばあの名作読んでないな」ということで買いました。SAO。

 

ソードアート・オンライン1アインクラッド (電撃文庫)

ソードアート・オンライン1アインクラッド (電撃文庫)

 

 

 何より素敵だったのは、SAO世界と現実世界という二層性がもたらす、キャラクターの二面性です。過酷な実力主義の世界で孤独に生きる戦士としてのキリトと、ゲーム好きな子供にすぎない16歳の和人。ギルドで役職を持つ著名な戦士のアスナと、家庭的で真面目な少女の明日菜。見え隠れする二面性がそのままキャラクターの魅力として、この世界の魅力として私を惹きつけてやみませんでした。揺らぎ揺らぎながらも運命に対峙することを決意する二人、子供であることを自らの意思でやめる二人に、たくさんの思春期の読者が心をつかまれたことと思います。

 

 心情と風景をマッチさせる技術、やや多めなのに重さを感じさせない世界感描写、直接的すぎない台詞回しによるキャラクターの心情のほのめかしなど、様々な技術の高い作者で、すっかり夢中になってしまいました。続きも買うと思います。

 

 短いですが今日はここまでで。

【現代アート賛歌】六本木クロッシング2019【森美術館】

素人が直感的に楽しめる企画展に秀でた森美術館。もうすっかり常連です。先日も現代アート企画展「六本木クロッシング2019」に行ってまいりました。

 

www.mori.art.museum

 

目当てはSNSで写真が出回っていた巨大ピンク猫、小林さん。入り口にいきなりいました。

 


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↑【デコレータークラブ -ピンクの猫の小林さん- / 飯川雄大

蟹の名を冠する彼がほんとうに猫なのかはわからない。とにかくでかい。絶対に全身を撮影できないように立っている。

 

映像作品と立体が多く、しっとり眺めるよりは「シュール」な作品が多かったです。楽しく困惑させられました。

 


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↑【人工的な恋人と本当の愛 -Artificial Lover & True Love- / 林千歩】

手前に座っているのはアンドロイド社長。後ろには切なげな音楽とともにアンドロイド社長が陶芸教室の生徒(人間)と不倫するイメージビデオが流れている。社長の手元には家族(アンドロイド)の写真が。家族を大事にしつつ不倫するっていう生生しさを、あえてアンドロイドにやらせるシュールさ。

 

 

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↑【Calling / 佐藤雅晴】

映像作品。電話が鳴り、誰にも取られず、切れる。それが様々な場所で繰り返される。ほとんどの場所でなぜか怖いほど人気がない。まるでホラー映画の1シーンのよう。もし明らかに自分宛ではない電話が鳴ったら、あなたは取るだろうか。

 

映像作品をしっかり見ようと思うと1時間以上かかるので、時間に余裕を持って来た方が楽しめると思います。あと、とある展示ではフラッシュ撮影の可能なスマフォを持っていると楽しいです。撮影を楽しんでいる人が多く、展示会全体の雰囲気がゆるめでらくちんです。

 

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↑【猫オリンピック:開会式 / 竹川宣彰】

解説を読むと悲しい不条理が制作理由らしいが、キラキラ輝く猫たちは見る人の心を和ませてゆく。

 

 入り口の小林さん、最後半の猫オリンピックとなぜかフォトジェニックな猫が二作品もあるので、猫好きな人にもおすすめです。ミュージアムショップも小林さんグッズが充実していました。あと図録は一冊一冊びみょうに表紙が違って購買意欲を刺激してきます。図録代三千円を握りしめていきましょう。

 

www.mori.art.museum

 

 

次の企画展は六月から「塩田千春展:魂がふるえる」。帰りに銀座シックスに立ち寄って塩田千春さんの新作も拝見してきました。

 

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↑【6つの船 / 塩田千春】

シンプルなはずなのに圧倒的な情報量。頭がすごく処理落ちする。

 

次の企画展もたのしみです。 森美術館はいいぞ!

肌が弱すぎる人間が柔軟剤をレビューする

 多分このブログを読むかたは初めまして。普段は本やゲームのレビューをしているのですが、今日はやる気がないのでいつもと違うことをします。今まで使った柔軟剤のレビューです。

 

 自分はとっても肌が弱いです。どれくらい弱いかというと、外出するとだいたいどこかにミミズ腫れを作って帰ってきます。何に触っちゃったのか覚えてない。新品の本を立ち読みしただけで手がぱんぱんに腫れます。ハンドル握れない帰れないたすけて。壁や机に手をつくとかぶれます。肘や腕を使いがちでお行儀が悪いのは露出部を守るためなの許して。タバコの煙をくぐると蕁麻疹がおきます。就活は駅で挫折した。

 

 そんな私の家庭内の大敵。それは柔軟剤です。使わないと衣類がゴワゴワしてかぶれる。使うと柔軟剤でかぶれる。かぶれない柔軟剤を見つけても、数ヶ月連続で使っているとかぶれるようになる。勘弁してくれ。常に柔軟剤ジプシー状態。

 

 そろそろどの柔軟剤がどうだったか忘れつつあるので覚書がてらまとめてみたいと思います。人によって肌の「なにが」弱いかはそれぞれなので、参考になる人もならない人もいる点だけご了承いただければ幸いです。

 

無添加さらさ】 

さらさ 柔軟剤 本体 600mL

さらさ 柔軟剤 本体 600mL

 

 評価:☆3

リニューアルしたのでしょうか、商品名も成分も変わってますね。

私が使ったときは無添加がウリで、確かに肌にはとっても優しかったです。ただし衣類にはとっても厳しくて、肌着がゴワゴワになり肌着との摩擦でかぶれました。残念。

リニューアル後は使ってないので今度試してみます。

 

 【ウルトラダウニー フリー&ジェントル】

ULTRA Downy (ウルトラダウニー) 柔軟剤 フリー&ジェントル 無香料 1.53L (60回分)

ULTRA Downy (ウルトラダウニー) 柔軟剤 フリー&ジェントル 無香料 1.53L (60回分)

 

 評価:☆5

衣類もやわらかくなり、肌もかぶれない。とてもよい柔軟剤でした。コスパもいいです。関東平野の冬の気温だと固まってしまうので、夏場にお世話になってます。

 

【ファブラッシュ 無香料】 

fabrush(ファブラッシュ) 柔軟剤 無香料 600ml

fabrush(ファブラッシュ) 柔軟剤 無香料 600ml

 

評価:☆1

かぶれた

 

 【フレアフレグランスシリーズ】

 評価:☆1

かぶれた

 

【マイランドリー ジャスミンの香り 】

マイランドリー 【ノンシリコン柔軟剤】 ジャスミンの香り 500ml

マイランドリー 【ノンシリコン柔軟剤】 ジャスミンの香り 500ml

 

評価:☆−2000

なーーーにが「肌に優しいノンシリコン♪」じゃ。洗濯物干しただけで手がぱんぱんに腫れたわ。いくらシリコン減らしてもこんなにダバダバ香料入れたら刺激になるに決まってんだろ! どういう開発意思決定なんだよ! 看板に偽りあるのは如何かと思います!

 

【エコベールシリーズ】

エコベール ファブリックソフナーフラワー(柔軟仕上げ剤) 本体750ml

エコベール ファブリックソフナーフラワー(柔軟仕上げ剤) 本体750ml

 

 評価:☆4

衣類がちゃんとやわらかくなり、かぶれません。しっとり感があります。オシャレ着用洗剤もとってもよかったです。高価ですが値段だけの満足感があります。

 

【ベビーファーファ】

ベビーファーファ 濃縮柔軟剤 600ml 本体

ベビーファーファ 濃縮柔軟剤 600ml 本体

 

 評価:☆3

リニューアル前はとてもよかったのですが、リニューアル後は短い期間でかぶれだすようになりました。そのうえちょっと高くなった。植物性原料なら優しいはずというのは幻想だと思います。

 

 【ファーファ ファインフレグランス クリスタルムスクの香り】

評価:☆2

肌に直接触れる服だとかぶれました。でもタオルや寝具ならかぶれず、生乾き臭がおきにくくなってよかったです。

 

ファーファトリップ スコティッシュサボンの香り】

評価:☆2

こちらもタオル程度ならかぶれませんでした。ファーファシリーズは全体的に香りの強さに反してかぶれにくいです。 

 

 【いい香りん ランドリン】

ランドリン 柔軟剤 クラシックフローラル 600ml

ランドリン 柔軟剤 クラシックフローラル 600ml

 

評価:☆1

かぶれた

 

 【ベビーソフター】

ピジョン ベビーランドリー ベビーソフター 本体 600ml

ピジョン ベビーランドリー ベビーソフター 本体 600ml

 

 評価:☆4

衣類の仕上がりはあまりよくないのですが、肌にはやさしかったです。 カットソーなど質感を人にみられる服には使わず、肌着や下着に使っていました。

 

【レノアハピネスシリーズのどれか たぶんベルベットローズ】

レノア ハピネス 柔軟剤 ヴェルベットローズ&ブロッサム 本体 560mL

レノア ハピネス 柔軟剤 ヴェルベットローズ&ブロッサム 本体 560mL

 

評価:☆1

かぶれた

 

 【ハミング すはだおもい フローラルブーケの香り】

ハミング フローラルブーケ 本体 600ml

ハミング フローラルブーケ 本体 600ml

 

 評価:☆1

数回使ったらかぶれた。おもいがとどかなかった。

 

 

以上です。ジプシーは続く。

【シリーズ◆世界の思想】ソクラテスの弁明 /プラトン著 /岸見一郎解説【18年夏刊行】

 図書館に行ったら「新しく入架しました」の棚にあったので、なんとなく手にとってみました。あまりにも分かりやすくてそのまま借りてきました。

 

シリーズ世界の思想 プラトン ソクラテスの弁明 (角川選書)

シリーズ世界の思想 プラトン ソクラテスの弁明 (角川選書)

 

 

 古代の名著をそのまま読むというのは専攻の学生さんでも難しいことです。やはり解説つきが欲しい。しかし、古いのを借りてしまうと常識が違いすぎて解説に解説が必要という問題があります。

 

 その点、昨年夏刊行という新しさ、現代の若者に向けてなされた解説は初学者にもってこいでした。今の煽りはどういう背景から生まれたのか。今の慣用句はなにのもじりなのか。弁明本文を段落ごとに区切りつつていねいに解説されていきます。

 解説文はとっても上手で平易です。するすると頭に入ってきます。

 

 学会名物「素人質問で恐縮なのですが」の元祖として名高い(?)ソクラテス。その挑発的なようで、優しいようで、とにかく正しいことを尊ぶ姿勢と魅力を垣間見ることができました。

 

シリーズ世界の思想 プラトン ソクラテスの弁明 (角川選書)

シリーズ世界の思想 プラトン ソクラテスの弁明 (角川選書)

 

 

 

【神社で美術展】常陸国総社宮 間の祭り【顕れる狭間】

 浅野暢晴先生の彫刻ホームステイ企画「旅するトリックスター」でホストをお受けしたときとっても楽しかったので、先生の作品が展示されるというアートイベントに行ってきました。会場はなんと神社。

 

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↑イベントの参加アーティストをイメージしたという鉢型トリックスターたち

 

  境内に展示された作品たちはそれぞれ間(はざま)がテーマ。

 ただでさえ日常と非日常の間にある神社、そこで出会う作品たちは八百万の神々が顕現したようでした。繊細な作風のかたが多かったこともあり、吹けば飛びそうなものたちが神社の中では圧倒的な力を持つ……そんな錯覚に襲われました。

 

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↑人間と神の狭間にあるものの集会に見えた

 

 また、作品はとても無造作に置かれているのですが、誰もそれを侵そうとはしません。ここは神聖な領域で、ここにあるものは不可侵である。そんな暗黙の了解が美術品の展示とマッチしているのかも……と思ったりしました。会場と作品の共鳴を味わえるのが野外展示の醍醐味。その中で神社の効果は秀でて特別な気がしました。

 

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↑夕焼けのなか、本殿へ白い石を運ぶ三本足の異形。まるで元から彼らのテリトリーみたいでした 

 

 会場は茨城県つくば市中心部からだと高速を使って30分ほど。聞きなれない土地ですが思ったより遠くなかったです。探索に夢中であまり写真を撮れなかったり、作者さんがいるのに声をかけそびれてしまったのでもう一回行きたい。今回は天気雨の夕方に行ったので、別な天候・時間に違う風情を味わいにいきたいです!

 

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 ↑陶でできた小石。少しずつ色柄の違うものがびっしりしきつめられていて、好きなのを一個持ち帰ってよいと書いてあった。警備員のおじさんたちと並んで真剣に選びました。神社で展示品を持ち帰るという特別感と、子供のころ当然だった遊びの間

 

  境内は広すぎず狭すぎず、休日のお散歩にとてもおすすめです。駐車場をご利用のかたは本殿に向かって左手の坂か、遠回りして順路通り鳥居から進むと体験が深いです。

 

jinjyadeart.wixsite.com

【ネタバレ注意】チームラボ・ボーダーレス【色と光に触れる場所】

インスタレーションアート集団「チームラボ」丸ごと彼らの作品でできた美術館と噂の「チームラボ・ボーダーレス」に行ってきました。

 

心身の健康な人は、ぜったいにネタバレを見ないで行った方が楽しいです。逆に子供がいたり体力に不安がある人は下調べした方がいいかもしれません。なんで? というのも含めて感想を書きます。以下はネタバレ注意でおねがいします!

 

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↑目玉展示のひとつ『ランプの森』。SNSでもよく見る。桜色は期間限定だったもよう

 

美術館というと、普通は建物があって部屋があって作品が並んでいて……というのが普通で、現代アートインスタレーションの文脈でも破られることは滅多にありません。しかしこの美術館。館内マップがない。順路もない。部屋そのものがプロジェクションマッピングなどの技術を駆使した作品群。それどころかなんと、作品が勝手に消滅したり移動し、名称通り「ボーダーレス」に振る舞うのです。

 

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↑展示室の床です。花が咲いては散り、風に流され、動物が横切ったり。床と壁の境目すらも曖昧

 

冒頭のランプの森をはじめとしたいくつかの展示は部屋の中から移動しませんが、道中の作品が変わってしまい見失います。いつしか目的地を定めず時間を忘れて探索するのがとてつもなく楽しくなっていました。さながらRPGのマップ自動生成ダンジョンみたいです。

(その性質上、授乳室やトイレが見つからなかったり、最後まで見たから帰るよ論法が通じなかったりで家族連れさんは大変そうでした)

 

ボーダーレスなのは部屋だけでなく、作品と鑑賞者の境界すらも曖昧で、世界観に没頭できました。館内は暗く、他人の顔はほとんど見えないし写真にもうつりません。プロジェクションマッピングで常に自分の体にも蝶が舞い花が咲き、ときに自分が触れることで変化する作品もあります。

 

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↑ボーダーを消すために鏡が多用され、ときに床が鏡張りだったりするのでスカート派の人は中身に注意です

 

特に印象に残ったのは館内の喫茶店。お茶を頼むとその水面に花が咲き、飲むために器を持つと花が散っていくという作品です。お茶のフレーバーはまるで花から香ってきているようで、とてつもない現実感がありました。

 


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↑花はお茶がある限り何度でも咲く。そして散る 

 

プロジェクターの固定が甘く小刻みに揺れている、フレームレートが低め、画質粗めなどの技術的な制約こそ見受けられました。が、逆にいえばその制約が取れてしまえば現実顔負けの没入感を出せそうで、5年後10年後が怖い美術館です。

 

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 ↑菜の花畑。こちらも期間限定の演出。白っぽい服で行くと自分も花になれる

 

他ではできない体験ができる魅力的な美術館でした。花や光が好きな人、写真を撮るのが好きな人には特におすすめです。薄暗くてロマンティックだからデートにもすごくいいよ!

 

borderless.teamlab.art

【投稿短歌まとめ本】短歌ください【穂村弘】

雑誌上で連載されている短歌投稿コーナー、そのまとめ本を読みました。 

短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

短歌ください (ダ・ヴィンチブックス)

 

 

一首一首に歌人穂村弘さんのていねいな選評が付されています。選評は短歌の読み方だけでなく書き方も教えてくれました。投稿作品をわざわざ改悪して「ほら、投稿作はこんなところがいいんだよ」と例を見せるなどかなり初心者に優しい本でした。

 

また、投稿短歌は投稿者の年齢や性別も含めて作品なんだなぁとひしひし感じることができました。たとえば

ごーごーと燃えてる屋敷のきれいさを忘れないまま大人になりたい

(陣崎草子・女・31歳)

ペガサスはわたしにはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる

(冬野きりん・女・18歳)

いずれもその年齢の女性が歌ったからこその凄みのようなものがあります。『啄木短歌論』にそれが真実であれ虚構であれ、読者は作者が口に出したものとして読み、作者の人格と不可分であると書いてあったのを肌で理解できた気がしました。

 

『短歌ください』コーナーは今尚現役で投稿短歌を募集し続けているようです。

短歌ください 穂村弘 応募コーナー | ダ・ヴィンチニュース

穂村弘先生に選評をいただけたら嬉しいだろうなぁ……