千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

【私は偏在する】serial experiments lain【時代先取りサイバーアニメ】

 古典サイバーSFアニメとして勧められたので観てみました。すごく重かった。

 ネタバレ全開で感想書きます、ご注意ください。

 

 あらすじとしては、現実感のない日々を送る少女:玲音が電脳空間WIREDとの接触で揺らいでいく話です。玲音はじきに、自分が実はWIRED内で生まれた『概念』であり、試験的に名前と姿と肉体を与えられたことを知ります。玲音が直面するのは分裂する自我、大きすぎる力、現実とは何か、そして自分は誰で・何で・どこにいるのか……など、年端もゆかぬ少女には重すぎる悩みたちです。迷い苦しむ玲音の姿が痛ましいアニメでした。

 

 VR機器が急速に進歩していたり、居るけど居ないバーチャルyoutuberが群雄割拠する今だからこそ「現実と電脳の曖昧さや実存がテーマか、へー」と思いながら観られましたが、1998年の人たちはどういう気持ちでこれを観ていたの……?

 

 電線、そして電柱の変圧器から発せられる唸りが象徴的に使われています。何度も見せられるうちに電線が、可視化された「リアルとインターネットの境目」のように思えてきました。玲音が不思議な力で電線を焼き切ったとき、彼女の中でも境界が崩れてしまったのでしょうか。

 他にも明言せず象徴的に画像で示す部分が多く、脳をフル回転させられました。演出の色彩や手法にもかなり癖があるので好き嫌いは大きくわかれそうです。

 

 このまま情報技術が進歩したら玲音のような存在が顕れたりするのかなぁと、不穏な後味が残っています。1998年の作品というのがまだ信じられません。