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アリストテレス『詩学』で小説書きに使えそうな部分を雑にまとめた

アリストテレスの『詩学』を読みました。

 

アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論 (岩波文庫)

アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論 (岩波文庫)

 

 

当時の詩人は、今の詩人とも劇作家ともシナリオライターとも微妙に違う職業です。しかし現代の小説創作に使えそうな記述もたくさん見受けられました。

 

なにしろ紀元前の書籍なので悲劇について論じた部分しか残っていないのが惜しいです。残ってるのもびっくりだけど……。

 

せっかく読みながら自分用にまとめたのでシェアしたいと思います。不勉強ながら解釈のわかれる部分や背景事情はまったく考慮しておらず「いいこと言ってんな」と思ったところをほんと雑にまとめただけなのをご了承ください。よく知りたい人は『詩学』買ってくだされ〜。

 

では始めます。

 

 

「『詩学』よりアリストテレス先生の考えるよい悲劇まとめ」

 

・喜劇はより劣った人間の再現であり、悲劇はより優れた人間の再現である。人は再現が大好き。

 

・悲劇とは?
→行為の再現により、あわれみとおそれを通じてカタルシスを作ること

 

・行為には性格と思想という原因がある。

 

・もっとも重要なのは筋(プロット)。なぜなら悲劇は行為の再現だから。
人格を再現するために行為するのではなく、行為を再現するために人格を示そう。

 

・筋を散らかすな。一人の人物についてなんでも語ればいいってものではない。
どの行為を再現したいか決めて、関係あるものだけ書こう。

 

・場面の偏重はよくない。互いに関係ない、いい感じなだけの場面のつなぎ合わせはよくない。
予想に反する、しかし因果関係がちゃんとある場合にカタルシスはもっとも大きくなる。

 

・筋の中で「逆転」と「認知」がおこると効果的。
「逆転」は行為が反対向きになること。死刑執行のためについてきた人が死刑囚を助けることになる等。
「認知」は「知らない」から「知っている」への転換。王様が先王殺害犯を死刑にしようとしたら、昔殺した男が先王だったと知る等。

 

・「逆転」と「認知」が同時におこるとき、あわれみとおそれを効果的に引き起こす。

 

・「苦難」を取り入れるのもいい。痛み、死の目撃など。

 

・よい人が不幸になること、悪人が幸福になることはカタルシスを呼ばないのでよくない。
だからといって全くの悪人が不幸になるだけでもあわれみやおそれを呼ばない。
人格者ではないが、邪悪さが原因で不幸になるのではなく、過ちにより不幸になるなどの中間がよい。
地位や名声があるやや優れた人物ならなおよい。

 

・善人が幸福になって悪人が不幸になるだけで喜ぶ観客は軟弱者だから迎合するなし

 

・おそれとあわれみを作るには、親しい人たちの間で苦難を強いるのがよい。
母親がやむをえぬ理由で子供を殺すことになるなど。

 

・行為は下のような三つのシチュエーションが効果的。
 自分のすることの恐ろしさを知っていながらそれでもする場合。
 自分のしたことの恐ろしさを後になって知ってしまう場合。
 無知によって企画したことが、行為の直前に恐ろしいことと知ってしまう場合。
恐ろしいことと知っていながら企画してやらないで終わるのは論外。

 

・悲劇が行為の再現であることを念頭に、性格を決める四つのポイント
 すぐれた性格であること。(地位や名声とは別)
 ふさわしい性格であること。(キャラにあうものを)
 現代の人間と似ている性格であること。
 性格が無意味に変わらず首尾一貫していること。
肖像画家を見習って、特徴を誇張しながらも美しく仕上げよう。

 

・衝撃の事実を知る場面「認知」のおこしかた
 プロットに沿って必然性のある出来事として知る。一番よい。
 推論によって知る。「こんなに私に似ているのは兄しかありえない」など。二番目によい。
 記憶によって知る。歌声を聞いて思い出す、絵を見て思い出す、など。
 印によって知る。傷跡、贈り物のペンダントなど。
名乗りをあげられて知るのは完全に作者の都合。無価値。

 

・長いプロットの前に短いアウトラインを決めろ

 

・文体は日常語と比喩や修飾語を混ぜて使おう。
日常語だけだと平凡になるし、比喩や修飾だけだと意味不明になる。
日常語の明瞭さと比喩・修飾の非凡さでバランスを取ろう。