千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

【ネタバレ注意】くまのレストラン

美麗なキービジュアルと、界隈では有名なゲームクリエイターらしいとの噂を聞き予約したゲームです。ハードはiPhone。有料版の虚無編までクリアしたので感想を書きたいと思います。

 

虚無編の最後までネタバレあります。ご注意ください!

 

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この世とあの世のはざまにあるレストランで、くまとねこが最後の晩餐を振るまうお話。ねこは記憶がなく、くまは誰かを待ち続けています。ジャンルはノベルゲームとRPGの中間くらいでしょうか。クリッカブルが多いですが、すべてを調べなくても物語を進められるようになっています。選択肢もなんども出てきますが基本的には一本道です。

 

まず目をみはるのは美麗なドット絵です。色調・輪郭、すべてがファンタジーめいた序盤の雰囲気にマッチしています。また、テキストボックスを排除することで美しい世界を画面いっぱいに楽しむことができています。大胆な配置、すごい。

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↑ど真ん中に文字があり、スマフォでとても見やすい

 

 

最後の晩餐を食べにきたお客さんたちからは、記憶のかけらをもらえます。何の記憶かというと、持ち主の死因の記憶です。これは見なくても物語に支障ないのですが、見たくなるのが人の性。ここに広告・課金のタイミングを持ってきて、ゲームへのモチベーションが低い人の離脱を避けているのめっちゃうまいなぁと思いました。


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↑見なくても大した支障はないが見たくなる

 

シナリオの流れのなかで、くまの探していた愛娘がねこであることが明らかになる、探していたものが目の前にあったと気付く瞬間のカタルシスは素晴らしいものでした。この設定、物語を小さくまとめやすいわ、うまく伏線敷ければ衝撃の事実を用意できるわでエモエモですね……!

 

切ないながらも穏やかな日常。そこに絶望を食らう悪魔があらわれ、お客さんたちやくまを食べてしまう。それを助けるまでが無料版のシナリオです。

満足度が高かったので続く有料版の「虚無編」も購入しました。名前がやや不穏。

 

 

「虚無編」は悪魔とともに地獄の果ての虚無へ落ちてしまったねこをくまが助けに行く話でした。前半とは違いかなり荒んだシナリオです。群像劇だった前半と違いくま・ねこ・悪魔の三者の話に集約されていってしまうので、前半が好きで続きを買った身としてはやや残念でした。

 

虚無で運命を共にしたくまとねこ。物語は虚無のなかで消えておしまい。かと思えば悪魔がこちらに語りかけてきます。

 

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↑虚無の悪魔がプレイヤーに語りかけるシーン

 

消えてしまったはずのゲームを取り戻す取引を持ちかけられる。この演出はUNDERTALEで記憶に新しいものです。ただ、UNDERTALEではキャラクターが第四の壁を破りうる存在であるという伏線がなんども敷かれていたのと違い、悪魔の語りかけはいささか唐突でした。ここは悪魔のモノローグで物語が進んでもよかった気がします。

 

クリア後も物語の世界は存在し続け、スポンサーになることで更に追加のシナリオや演出を見られるようになっていました。最後まで遊んでくれたファンにこそ収益化のお手伝いをしてもらう、しかもゲームの中から語りかける。ゲームは世界や体験を買うものなのだという本質をついた収益化システム……!

 

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↑ゲーム開始後からレストランの隣にあった建物を調べると

 

ゲームの完成度はもちろん、小規模ゲームクリエイター群雄割拠時代でいかに気持ちよく課金してもらうかという手腕においてとても勉強になる作品でした。

 

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