Fate/stay night [UBW]がとてもおもしろかった、という話をしたところ「Zeroも見てくれ」と強く勧められたので見てみました。古い作品なのでネタバレありでお送りします。
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原作はFate/stay nightの前日譚として作られたライトノベルだそうです。原作は虚淵玄さん。虚淵ファンの自分はこの時点でテンション爆上がりでした。ぜったいいろんな人が斜め上の方法でひどいめにあうじゃん。
基本的な世界観としては、あらゆる願いを叶える魔法の道具「聖杯」を奪いあい、七人の魔術師がそれぞれ英雄の霊「サーヴァント」を使役して戦うというもの。最後まで戦い抜いた魔術師が聖杯を得る、というルールのはずなのだけれど……? 万能の願望器のために戦うという希望が徐々に裏切られていく、その葛藤が見所となっています。
主人公はstay nightの主人公の養父、衛宮切嗣。召喚したのはアーサー王。アーサー王は実は少女だったという事実に加え、騎士道を重んじて決闘で前に進もうとする彼女と、暗殺者として卑怯で生計を立ててきた切嗣の温度差がすごい。どちらも正しいのでヒリヒリとした緊張感がたまらないです。
切嗣は「二度と流血しない世界平和」のために聖杯を求めています。その過去として挿入されるエピソードは、恋人が発狂したのを殺しそびれたり、村が全滅したり、村が焼かれたり、父を殺したり養母を殺したり、理不尽に子供が死ぬのを見たり、聖杯の獲得に妻の死が必須だったりとテンプレートが盛りだくさんで最高でした。ここまで盛っておきながら流れが自然ですごかったです。聖杯を得てなお、死と隣り合わせだった切嗣の「世界平和」も当然のように「人類全員の死」でしかなし得ないと知り、切嗣の理想は0に帰していきます。えぐい。こんなえぐい理想を引き継いでstay nightが始まったかと思うとstay nightを見る目が変わってしまう、そんな素晴らしい前日譚でした。
また、この物語は七人の魔術師と七人の英霊がいるため、全員分の膨大なサブプロットが走っています。それを二期分のアニメに削って落とし込み「一見殺し合いだが真には理想の潰し合いで、理想の折れた方が敗れる」という部分を暗黙に提示していく構成には目を見張るものがあります。
Zeroの名を堂々と冠するだけの、無に帰していく美がたっぷり詰め込まれた作品でした。