千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

【ネタバレ注意】天気の子【感想】

 「君の名は」で人気を博した新海誠監督の最新作。特にオタクの評判が高いということで、観てまいりました。

 

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 あらすじとしては、離島から東京に来た家出少年・帆高が、祈ると必ず晴れになる少女・陽菜と出会う恋物語です。社会からはじき出されたような二人は、やがて世界と陽菜を天秤にかけることを強いられます。記録的な豪雨に見舞われる東京を救うには陽菜の命が必要だと知るのです。

 

 新海監督の作品で初めて観たのは『秒速5センチメートル』です。こんなに文学っぽいアニメを作る人もいるんだ!ととても新鮮だったのをよく覚えています。

 私が好むような文学系の恋愛小説は「今まで積み上げてきた世界よりも、あなたがいい」が醍醐味のエンタメです。その積み上げは社会的地位だったり道徳だったりして、その世界は仕事だったり宗教だったりします。しかし、そこに積み上げがゼロの童貞学生を起用すると、本当に世界が壊れゆく。今作『天気の子』、新海誠セカイ系はそんな感じだなぁと思いました。

 

 特にセカイ系の演出に大きな役割を果たしていたのは、須賀の存在だったと思います。須賀は路頭に迷っていた帆高を自分の編集事務所に住まわせるのですが、彼こそが確たる「今まで積み上げた世界」を持った、世界より大事なものを選べない帆高の影であり続けます。彼がいるからこそ、彼が最後に帆高に手を差し伸べるからこそ、よりいっそう世界を壊す選択がまばゆい物語でした。

 

 表現手法はアニメーションですが、内容はかなり重く、文学好きにずっぷり刺さる作品だったと思います。実写で作られそうな核のシナリオが、アニメでしかできない色彩やアングルで花開く。そんな作品だと思いました。90-00年代十八禁ノベルゲー勢が沸き立っているのも納得でした。

 

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