千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

【ネタバレ注意】目 非常にはっきりとわからない展【いるはずのないAudience】

事前の情報公開いっさいなし、SNSで「謎解きみたい」「ほんとうにわからない」と評判になっていた美術展。最終日に駆けこみで行ってきました。

 

【目 非常にはっきりとわからない展】

http:// http://www.ccma-net.jp/exhibition_01.html

f:id:senjunoriko:20191229105758p:plain

↑公式のチラシ。へんなところで切れているのはスクショが下手だからではなく、最初からこういうデザインです。

 

 

公式サイトをみても地球磁場逆転地層(チバニアン)から着想を得たこと以外あまり情報が拾えません。公式PVも、目のメンバーと思しき人たちが釘を打ったり梱包したりの作業をしているのみです。

 

※以下ネタバレありで体験記・感想を書きます。ご注意ください※

 

 

 

 

 

美術館に到着した私を出迎えたのは、長蛇の列でした。思った以上にこの展覧会は評判だったようです。

 

列に並んだものの、会場の様子がすでにおかしい。足場が組まれ、養生がされているのです。受付では会場内で携帯を取り出さぬよう注意を受けました。撮影禁止を課している美術展は多いですが、取り出しまで制限されるのは珍しいことです。また、「Audience」と書かれたシールを渡され、目立つところに貼るよう指示をうけました。

 

千葉市美術館は縦に細長く、会場は7階と8階。さっそく会場へ向かうことにしましたが、エレベーターの中もがっちり養生されていました。

 

7階に降りると、これまた養生、開封されていない荷物、足場と工具が散乱していました。まるで美術展などやっていないかのように。そしてスタッフがいそいそと荷物を動かしているのです。

 

「なるほどこういう展示ね」と笑いながら8階にのぼりました。しかしそこには、7階とまったく同じ光景が広がっていたのです。ほんとうにまったく、物の位置が全部同じなのです。

 

ぽかんとしながら再び7階に戻ると、スタッフが動かしていたはずの荷物がもとに戻っていました。ん??

 

何度も7階と8階を往復しましたが、この会場で何が起こっているのかなかなか掴めませんでした。会場の様子が動く。かと思えばいつの間にか戻っている。スタッフはいそいそと動き続けているのに……。会場の壁にある展覧会のポスターたちもおかしい。全て10月下旬から11月に始まる展覧会のもので「非常にはっきりとわからない展」のポスターが見当たらないのです。

 

諦めて最上階で休憩を取ろうと、エレベーターへ。すると半透明の養生のむこうに「非常にはっきりとわからない展」のポスターがあり「予告」のシールが貼られていました。

 

f:id:senjunoriko:20191229112405j:image

↑最上階のレストランで何が起きているのか必死に考えたメモ

 

 最上階のレストランで考えこんでいると、隣の席のおじさまが興味深い話をなさっていました。「劇団悪魔のしるし 搬入プロジェクト」というパフォーマンスの話です。それは搬入可能ぎりぎりサイズのオブジェを作って会場に運びこむ、それ自体を観客に公開するとのこと。

 

搬入。芸術の関係者にとっては当たり前のことですが、一般客にとっては未知の世界です。この「非常にはっきりとわからない展」でも、いるはずのないAudienceの前で、過去であるはずの搬入が行われていました。

 

大きなヒントをもらって食事を終え、改めて会場に戻ると新しい発見がありました。一見無秩序に見えたスタッフたちですが、途中まで搬入を進めたかと思うと、時計の針が逆回りしているかのように物を戻し始めるのです。そして少し時間が経つとまた搬入を進め、逆再生で戻していく。

 

地球の磁場が反転した証拠であるチバニアン。それを思わせるかのように、ここでは時間が永遠に反転を繰り返し、展覧会が始まらずにいました。

 

タイムリープ、タイムスリップ、ループなどをテーマにした展示やアトラクションは多くありますが、時間反転を扱ったものには初めて出会った気がします。それと搬入を舞台にするあわせ技で、美術館の役割を大きく破壊して素晴らしかったです。また、細長いビルである千葉市美術館だからこそ、7階と8階で別な部屋の搬入が進んでは戻るという大混乱を仕掛け、ぱっと見では「非常にはっきりとわからない」展示にすることができていました。知恵熱が出そうなほど考えこんで、本当に楽しかったです。

 

本展の主催グループ「目」はこれが初めての美術館個展とのこと。今後もぜひ彼らの活躍を追いかけていきたいです。