千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

【拓かれて、開かれろ】ベネッセアートサイト直島

 直島をご存知でしょうか。1990年代からアートで島起こしをし、年を経るごと評価が上昇、周りきれぬほどの美術館と野外・古民家アートを抱えてなお2025年にも直島新美術館を開館させた熱い美術館リゾートです。

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 中学生のころ美術の資料集で『ナルシスの庭/草間弥生』や『無限門/李禹煥』を見て以来ずっと訪れたかった観光地でした。しかしリゾートホテル級の宿泊費に加え、茨城県から行くと交通費だけでもなかなかのもの。機が熟すまで粘りに粘り、ミドサーとなった今やっと行ってきました。

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 人生初のフェリーに乗り、港で出迎えてくれたのは『赤かぼちゃ/草間弥生』『ドロップチェア/SANAA』『パヴィリオン/藤本壮介』など既に錚々たる面々です。元気な人は歩いてアート散策を始めましたが、自分は足が不自由なのでベネッセアートサイト宿泊者専用バスへ。巡ったところをかいつまんでご紹介します。

 

【李禹煥美術館】

 今回の旅の主目的地です。大好きな李禹煥の作品が野外含め10点ほどたっぷり置かれている美術館。人気のない海辺の山中は氏の作品に雰囲気ぴったりで嬉しくなりました。
 お客さんのほとんどが首を傾げたり釈然としない表情をしていたので、笑ってしまいました。直島に来るようなアートマニアでもそうなんだ!
 自論ですが、李禹煥の作品は置いてあるものを一個ずつ鑑賞しようとすると分からなくなってしまうと思います。彼はモノを置くことで空間そのものを変容させているので、引きで見るのがコツかと思います。
 アフォーダンスという概念を使うとわかりやすいです。例えばですが、三角コーンが二つ並んでいたら、よほど鈍い人でもない限りその間は通らない。いえ、通れなくなります。間にテープがなくても、モノによって空間が変質するわけです。では、コーンではなくポールだったら? 本2冊だったら? そして岩二つだったらどうなるでしょうか?
 では、作品に戻りますと、李禹煥は美術館や野外に大きな岩や鉄板を置きます。そこに岩や鉄板を置く前はそこはどんな空間だったでしょうか? 何が変わったでしょうか? そう考えると、作品の周囲一帯を迸る異様な緊張感に気付くと思います。空間を変質させてしまう魔法、それが李禹煥の作品であると私は考えています。美術館の展示室はもともと緊張が高い空間なので、野外の方が氏の魔法はより際立つと思います。

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↑無限門/李禹煥

 直島を代表する作品である『無限門』は空間変質を分かりやすく感じられる、初心者おもてなし作品だと思います。この門を臨むとわかるのですが、海風が真正面から吹きつけてきます。作品はまるで「ここを通って海へ向かえ」と言っているようではありませんか? 芝に残った獣道でもわかるように、多くの人が実際にそうして、海風を受けながらアーチをくぐって海を見に行っていました。この島は海に囲まれているので、こんな場所いくらでもあるはずです。しかし無限門によって、ここは鑑賞されるべき水平線に変質したわけです。

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↑『関係項/李禹煥』
空間がミソなので、李禹煥の作品は写真に撮ると魅力が消えてしまう

 李禹煥の空間の魔法を思う存分満喫できて、あまりの名残惜しさに帰り際「ここを柵で囲ってドアをつけて住む」と駄々をこねてしまいました。
(※ぽこあポケモンというゲームでは柵で囲いドアを建てるとポケモンのおうちになります)

 

【ベネッセハウス・ミュージアム】

 ベネッセアートサイト直島の中でも最初期にできた美術館ホテルです。宿泊客は無料で自由に出入りできます。安藤忠雄による建築の中に配された作品たちと客室が魅力とされています。

 しかしながら鑑賞中に感じたのは排除でした。全く歓迎されていない。外の山道を映したような急峻で狭い坂、周遊性を盾に繰り返される階段、握る手を拒絶する冷たい手すり、邪魔なものかのように視界の外へ追いやられた安全設備、動線から外され衝立の奥に隠されたエレベーター、ひとつしかない女子トイレ。女子トイレの行列の先頭に居ましたが、白人のかたが狭い個室でお婆さまの排泄を手伝っていました。安藤忠雄の代表作として売りにしている以上、ここが三十年前の建築物だなんて言い訳になりません。残念ながら大きな声で抗議します。三十年前の差別を保存したリゾートのどこで「よく生きる」をしろというのか。ここはベネッセの「よく生きる」という理念を体現できていない、時代遅れの哀れな箱です。ここを改修せず矢面に出し続ける限り、このリゾートにこれ以上の成長はないでしょう。
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↑簡単に脱輪する狭く急な坂をスロープとは呼ばない

 

 収蔵作品たちは素晴らしかったです。いずれも現代のアーティストとして名だたる面々、鮮やかだったりセンセーショナルだったりの初心者向け作品が多く、広い客層が楽しめる作品群となっていました。

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↑雑草/須田悦弘
本物そっくりの木彫りの草を植えることで有名な須田氏の作品。ここに作品があること、気付かずに過ぎてゆく人も。あとからパンフレットを見て「え、どこにあったの?」と慌てるのも醍醐味です。
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↑バラ公衆電話跡/須田悦弘
不意に好きなアーティストの新作に出会えると嬉しい。今年1月に新たに設置されたようです。ラッキー。

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↑瀬戸内海の流木の円/リチャード・ロング
突然故郷が「美術館の島」として切り拓かれて、地元の人々はどういう気持ちだっただろうか。それは首都圏から来た観光客としてずっと気になっています。この地へのリスペクトのある作品が増えてほしいところです。

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↑魚とパン/ジェニファー・バートレット
タイトルを見て「メインそっちなんだ」と困惑しました。どこか魔女狩りを連想させるモチーフの多い絵です。反対側は大窓、薄暗い大絵画が瀬戸内の穏やかな朝日を受けていて異様な空間でした。f:id:senjunoriko:20260323072735j:image

↑タイム・エクスポーズド/杉本博司
黙々と整列した水平線の写真たち。よく見ると潮目や波が微妙に違い、別な写真であることがわかります。滞在中もっとも非現実感を覚えた場所のひとつです。

 

【杉本博司ギャラリー 時の回廊】

 ホテルのパーク棟・ビーチ棟のエントランスを兼ねており、宿泊客は無料で自由に出入りできます。

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↑光の棺/杉本博司

 館内は迷路のようになっており、しかも照明が極限まで抑えられ、隙間からさし込む自然光のみが頼りです。訪れたのは快晴の昼間でしたが、雨天や夜間に来るとまた違った魅力を楽しめたことでしょう。宿泊客は23時まで館内を散策できます。

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↑硝子の茶室『聞鳥庵』/杉本博司

 スタッフの案内で薄暗い迷路のような館内を抜け、ガラスの茶室を横目に宿泊棟へ向かうのはわくわくする体験でした。写真の枠外左手は茶室を臨めるカフェスペース、右手は公園と海です。撮った以外にも沢山の作品が視界のあちこちに点在し、飽きることがありませんでした。

 

【ベネッセハウス ビーチ 客室】

 ベネッセハウスには、美術館となめらかに接続するホテルが4棟あります。今回はビーチ棟スイートへの宿泊となりました。

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↑新聞写真 071、星 5.19/トーマス・ルフ
海の音を聞きながら作品を独り占め、贅沢な時間です。

 美術館からの道中も言い切れないほどの作品が設置されていましたが、客室それぞれに違うアート作品が展示されているのも嬉しいところ。別な作品と出会うために何度も来たくなってしまいます。


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↑客室テラスと眺め

 瀬戸内海は初めて来ましたが、あまりにも波が穏やかで驚きました。こんな海の近くにホテルを建てられるなんて、太平洋側では考えられません。左手には船着き場に設置された『南瓜/草間彌生』が見えました。とても有名な黄色いカボチャです。

 夜中や早朝にアートを鑑賞する特権を味わうか、はたまた最高のオーシャンビューを広い部屋で満喫するか、贅沢に悩みました。

 

 他にも地中美術館と古民家アートをいくつか回りましたが、割愛します。直島新美術館に行く余力を持てなくて残念でした。

 

【ミュージアムリンクパス制覇】

 今回の旅の目的のひとつは、美術館3つをめぐるスタンプラリー「ミュージアムリンクパス」最終スタンプの取得です。東京の森美術館、金沢21世紀美術館、そしてこのベネッセアートサイト直島という移動距離がとんでもないラリーをついにゴールです。

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↑長旅につきあわされてヨレヨレ
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↑「すみません、ここのスタンプ大きいんです」と別ページへ押印。
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↑制覇記念品をゲット!

 私がアートと出会ったのは筑波大学在学中、芸術専門学群の皆さんが学内で行う成果展です。私は体が不自由で在学中も激しい差別に遭いましたが、美術特に現代アートの空間でそういったことは一度もなく、いつしか心と体を休めに展示室へ通うようになっていました。お金もなかったので、障害者割引で安く入れる美術館を安全な遊び場として選ぶようになりました。気付けば特別展を自ら選んで遊びに行くようになり、そして美術館のためなら初めての新幹線やフェリーに乗ることも、見知らぬ土地へ旅することも厭わぬようになっていたのです。

 この金色にきらめく小皿は、私が現代アートに貰った翼の形です。

 

【おまけ 旅程編】

 旅慣れていないうえに歩くのが苦手なものですから、何ヶ月もかけて調べに調べて必死に旅程を組みました。た、たいへんだった。。。

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↑旅程メモの一部。なお、飛行機からことでんバスに15分で乗り換えるくだりは失敗している。飛行機から荷物引き上げるのってこんなにかかるんだ。

 三月末のただの三連休でしたが、思った以上に人が多く、帰りのフェリーは積み残されてしまいました。フェリーって立ち乗りできないんですね。(あんな高速の鉄のハコで立ち乗り鮨詰めになってる首都圏の電車の方が異常か。)相当前から乗車列に並ぶか、昼の便で帰る必要がありましたね。また、高松-直島便は数が少ないので、宇野側からアクセスする方がいろいろ便利だったと思います。積み残された後は宇野港から鉄道で高松に戻りました。島離脱即飛行機にせずビジネスホテルで後泊のバッファを取っておいてよかった。。。

 ベネッセハウスの宿泊予約自体は180日前の予約解禁後すぐに行っています。それでもみるみるうちに予約枠が埋まっていき、希望の部屋は取れませんでした。奮発してホテルのディナーコースと朝食ビュッフェも予約しました。島の中はコンビニもなく飲食店が限られているので、逆に予約しないと困ることになるかもしれません。

 また、美術館のいくつかは日時指定予約が必要で、当日券は尽きていました。ベネッセアートサイト直島公式アプリから事前に電子チケットが取れます。とはいえ島のほとんどが過酷な山道、あんまり沢山取り過ぎても移動が間に合わないのが悩ましいところです。元気な人はバスを待たずレンタサイクルや徒歩で次の美術館へ向かっていました、すごい。無料シャトルバスはほとんど毎便満車だったので、ベネッセハウス宿泊者専用バスにお世話になりました。

 そんなこんなで高度な計画性が要求されますが、辿り着ければ最高のロケーションに素晴らしい作品がひしめいています。素敵な旅でした。アートにどっぷり浸る非日常、アートマニアの皆様もぜひ。

 

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【それは時の物語か】六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠

 森美術館で三年に一度行われる六本木クロッシング。前回「往来オーライ」、前々回「つないでみる」ともに大満足圧巻の展覧会だったため、今回も足を運びました。森美術館は年末年始も開業で行きやすいですね。公式サイトによる六本木クロッシングの説明は下記の通りです。

「六本木クロッシング」は、森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として、2004年以来、共同キュレーション形式で開催してきたシリーズ展です。第8回目となる今回は、森美術館のキュレーターに加えて国際的に活躍するアジアのゲストキュレーター2名を迎え、「時間」をテーマに、国籍を問わず日本で活動する、もしくは日本にルーツがあり海外で活動するアーティスト全21組を紹介します。

 現代アートの担う役割、あるいは担うべき役割のひとつに差別や分断への抵抗があると思います。今回六本木クロッシングは「日本のアート」に日本在住日本国籍日本人以外を広く含みました。それは排外主義や右傾化が加速する本国において大きな意味を持つでしょう。称えられるべき取組だと思います。

 ただ、キュレーションにはいささか不満があります。今回「時間」をテーマに作者と作品が選出され、作者が地域や社会においてどんな時間を過ごしたかに大きな重きを置かれていました。それが評価されるべきであることに異論はありません。

 しかし、鑑賞者としては物足りなかったです。なぜなら、作者が過ごした時間に重きをおくあまり、作品と鑑賞者が過ごす時間がおざなりであったからです。全体の作品数もやや控えめ。ワークショップやライブ制作のために取られた広い空間は、イベントに当たらなければただのがらんどうです。森美術館の特徴のひとつは撮影および私語の自由ですが、SNSで新たなファンを呼び込めるようなフォトジェニックさを持つ作品も少なかったように思います。「往来オーライ」や「つないでみる」でずっと聞こえていた鑑賞者の笑い声も今回は聞こえませんでした。これは森美術館で、六本木クロッシングですべき展覧会だったでしょうか?

 

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↑水中の月/A.A.Murakami

キービジュアルとなっている作品ですが、今回の展覧会の満足度を下げた一因でもあります。宣伝では全ての枝からとめどなく白いシャボン玉が滴り落ちていましたが、私が見たときはたった2本の枝しか機能していませんでした。作品は適切に管理されていたでしょうか?

 

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↑無題(私たちの勝利の物語)/ガーダー・アイダ・アイナーソン

手前の白いブロックたち。デモの車止めに使われたそう。主張のプロであるアーティストがデモに参加し、こういう小道具にも意味を込めてくれたらどんなに頼もしいだろうと思いました。


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↑フラジャイル・ギフト/北澤潤

本展覧会で最も心を打たれた作品です。手前の黒い幕には作者の想いが綴られています。日本軍がインドネシアを侵す際に使われた隼という戦闘機は、インドネシア独立戦争ではインドネシア軍によって使われたそう。後者のためか、作者に親日感情を向けてくる現地の人々。揺らぐ作者の心が、現地の大型工芸凧と出会い、本作を着想するまでの経緯に胸が苦しくなりました。この凧が空を飛んだこと、インドネシアに戻ったこと、耳にするのが楽しみです。

 

 展望展示室にあった『ネネット/細井美裕』と『MITTAG/和田礼治郎』の前では、お客さんがゆったりと談笑しながら作品を鑑賞する森美術館らしい光景が見られました。写真がないのは人の映り込みを避けられなかったからです。でも写真が撮れないほどの人と作品の近さがとても嬉しかった。

 次回はぜひ、森美術館という場を活かした展覧会を望みます。

 

 余談となりますが、うっかり作者名を控え忘れて検索をかけた際、こちらの記事を拝読しました。とてもしっかり書かれていて読み応え抜群でした。インターンのかたの執筆とのこと、今後の活躍に期待申し上げます。

www.tokyoartbeat.com

映画『爆弾』【ネタバレ注意】

 みなさん煽り上手の犯人は好きですか。私は好きです。もし刑事モノの登場人物になれるなら、犯人を尋問するはずが矛盾や甘さを揶揄われ、ブチ切れながら机を叩いて怪我したい。

 でも探しづらくないですか犯人が好みのミステリやサスペンスって。ネタバレとなってしまうこともあり、熟練ミステリファンほど口を噤んでしまうという悲しみ。しかし「爆弾」は映画となったことでXで口コミが広まり、とても魅力的な犯人との噂が私の元まで届きました。

 調べてみると原作はこのミスこと「このミステリーがすごい!」首位であった小説とのこと。ならシナリオは折り紙付き、安心して観られます。知るのが遅く公開から2ヶ月ほど経ってしまいましたが、近所の映画館で観てきました。

 

※この記事はネタバレを含みますのでご注意ください

※あと、ここで戻る人のために注意喚起なのですが、あまりリアルではないとはいえ大怪我や死体のシーンがあります。苦手な方は鑑賞の際ご注意を。

 

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↑公式サイトの感想投稿キャンペーン用の画像。キャンペーンは終わっていますが、ちょうどよいのでサムネイルに拝借します。変顔しているのは私がこれから褒めちぎるスズキタゴサクです。

 

 あらすじとしては、酔って暴れて逮捕されたはずのおっさんが霊感と称して爆弾テロの発生をほのめかし、それが実際に起きてしまうというものです。

 当然、警察は霊感なんて信じませんので、爆弾テロのキーパーソンとして取り調べすることとなります。スズキタゴサクと名乗る身元不明の男性と、刑事の腹の探り合いが見どころです。

 

 何よりこのスズキタゴサクのキャラ造形と俳優・佐藤二郎氏の演技が素晴らしかった! スズキタゴサクが登場して数分は「この役者さん、酔っ払い役のはずが所々にインテリジェンスとエレガンスが出ちゃってるな」と思いましたが、完全に役者の手のひらの上でした。その違和感こそがスズキタゴサクを彼たらしめる味なのです。何も覚えていないとうそぶき、最底辺のおじさんを装いながらも、その弁舌や駆け引きの巧みは何もなかった男には見えません。しかし、こんな人だったのだろうという背景が話せど話せど見えてこない。疑問ばかりが増していくのです。

 スズキタゴサクは無敵の人を装います。社会的に何も失うものがないため、凶悪犯罪に躊躇のない人のことです。昔からインターネットスラングとしては有名だった言葉ですが、昨今では広く一般に知られているかと思います。スズキタゴサクは無敵の人の認知度の広まりによって生まれた犯人像とも言えるかもしれません。でも一方で紋切り型な無敵の人とは異なり、スズキタゴサクはあらゆる身元情報を紛失したうえで捕らえられており、本当に失うものがないかどうかさえ分からないのです。

 スズキタゴサクの謎かけによって爆弾の場所を割り出すしかない状況を打破しようと、刑事たちはタゴサクの人物像に迫ろうとしますが、翻弄されてうまくいきません。尋問を担当するのは三人の刑事、あと一人の立ち会いの刑事なのですが、この三者三様の関わり方がまたタゴサクの魅力を深めていました。最初に相対する等々力を「気に入った」というタゴサクは、実は事件の鍵を握る彼のことを以前から知っていたのか? 二人目清宮の公務員らしい清廉が翻弄され、理性がへし折れる瞬間はこの映画のクライマックスのひとつでしょう。記録係の立場で出世欲を見せ、まんまと利用されてしまう伊勢も良い味を出していました。ひとりくらいは完封負けしてくれたほうが他の刑事の強さが際立ちます。そして温まったフロアでラストバトルに臨む類家刑事は、タゴサクと相対するにふさわしいクレバーとクレイジーを見せてくれます。

 ほとんどのシーンが取調室でありながら、世界観は閉じることを知らずスケールは広がり続け、まったく退屈しませんでした。物語として語りきれなかったような前日譚後日譚も、スズキタゴサクというキャラの前では謎を謎のままにする彼の深みでしかありません。事件の背景全てがブラックホールのように彼の存在に吸い尽くされて暗く重く心に残ってしまいました。

 

 ずっとスズキタゴサクを褒めてしまいました。二度目となりますが、このスズキタゴサクというキャラに食われず演じきる佐藤二郎氏に大きな拍手を送りたいです。

 私が観に行ったときにはすでに『爆弾』の上映枠は一日一枠となってしまっていました。爆発音を良い音響で味わうためにも、ぜひ映画館に足を運んでみてください。

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

 

 

 

 

【東京ビエンナーレ】スキマプロジェクト/エトワール海渡リビング館会場

11月下旬、せっかく東京に出る用事ができたけど、いつもお世話になってる美術館はおおむね展示替え中かもう見た特別展だなぁ……と思いながら検索しているとこちらのイベントを見つけました。

tokyobiennale.jp

ビエンナーレなので二年に一度は行われているはずですが、今回初めて知りました。北は上野、南は八重洲方面までと広い範囲でのイベントですが、用事は銀座・日本橋方向だったので、近い2つの会場を訪れることにしました。

スキマプロジェクト

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都市の構造を物理的、観念的な「スキマ」からとらえ、ビルの間のわずかな隙間(すきま)を作品発表の空間や作品そのものとして活用する試み。1999年に中村政人とコマンドNが実施した伝説的なプロジェクトで、今回は路地裏の鉢植えの隙間を縫うように、アーティストたちの彫刻作品が鉢植えに「擬態」しながら、まちのスキマ空間を豊かに彩ります。

とのことで、公開されているデジタルマップをもとに日本橋の裏路地を探しに行きました。

 まずは福徳神社へ。名のある神社らしく多くの参拝客が訪れていましたが、展示がある神社裏にはまったく人がいませんでした。展示が行われていることも知られていなさそうです。

f:id:senjunoriko:20251124093137j:image↑もしかしての石/寺内木香
芸術家さんがこだわって配置しただけあり、写真下手の私がざっくりと撮っても大変絵になります。


f:id:senjunoriko:20251124093102j:image↑Power chord – Praying hands/森 靖
お賽銭が元からあったのか、この手の厳かさにつられて入ったものなのか気になりました。

そのまま歩き、さらに裏路地の方へ。百貨店や老舗銀行などが並ぶ大通りと違い、小ぶりなカフェや飲食店が建ち並んでいました。こんな場所があるなんて初めて知りました。f:id:senjunoriko:20251124093125j:image
f:id:senjunoriko:20251124093133j:image↑跳ね返る、目と芽と/戸田祥子
あまりにも、あまりにも景色になじんでおります。写真以外の場所にも作品があったのですが、疑心暗鬼にかられるあまり普通の小学生の朝顔鉢にも近づいてしまいました。


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↑日本橋のイエハニワ/6lines studio+塚本由晴
びっくりするほど人が居ない。作品は右手です。おしゃれな建物や花壇が多いので、まるで持ち主が始めから置いたかのようです。


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↑萬葉草奔/ミルク倉庫ザココナッツ
あまりにも人がいなさすぎてアート作品とツーショを撮れるレベルでした。


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↑これから探しに行く方はこの青いタグを目印にするとよいと思います。

 もともとがおしゃれでアートと親和性の高い街だけあり、どの作品もしっくりしすぎていて、すれ違う人々もまさか期間限定で置かれているアート作品だとは思っていないようでした。三連休でしたが、スキマプロジェクト目当てのかたとは一度も逢わなかったと思います。場を活かそう、親和しようとするアーティストの皆さんの気遣いと技術がかえって裏目に出ているようでもったいなかったです。

 東京ビエンナーレ2025のテーマは「いっしょに散歩しませんか?」とのことですが、テーマに沿った素敵な企画で、日本橋の裏路地にある店店と新たに出会うことができて、とても楽しかったです。

 

エトワール海渡リビング館会場

 2カ所ある拠点展示場の片方です。馬喰町には初めて訪れましたが、あまりアートの気配を感じない生活感あふれる街で、やや不安になりながら地図を追いました。着いたエトワール海渡リビング館も、よく言えば倉庫、正直に言えば廃墟の風体で、入った瞬間かなり不安になりました。

 展示の内容も不穏なものが多く、現代アートの醍醐味といえば醍醐味ですがアート会場より先鋭的お化け屋敷といった風情で始終楽しく困惑し通しでした。写真はありませんが初っぱなの展示が「録音した自分の声が勝手に認知症のかたと交流するのを眺める」というInside Dementia/窪田望ですし。。。

f:id:senjunoriko:20251124093110j:image↑BREATHE/チュオン・クエ・チー&グエン・フォン・リン
近づいたらナイフと袖がガチャッと動きました。こわいよ! 他にも籐椅子をほぐしたものがブンブン回っていたり、サイドミラーがゆっくり回っていたり、問屋倉庫の薄暗さの中でかなり怖い思いをさせてくれました。

 

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f:id:senjunoriko:20251124093141j:image↑サンウォーク ― サンポ/マリアム・トヴマシアン
落ちていたゴミを日光写真に焼き付け、薄い布地に展示してあります。会場の薄暗さもあいまって、都市の幽霊を目の当たりにしているようでした。薄布の道の最奥は行き止まりで、展示キューブに青写真の冊子が置いてあり、触れて良いのかためらうほどの異様さを放っていました。

 

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↑名称の庭/渡辺英司
7階建てのうち2階以外すべてが展示場で「上に行くほど展示の難解さがあがっていくね」と話しながら進んでいきました。最後2フロアは明らかに業務用の無骨なエレベーターを使わねばならず、ガタガタ揺られながら最終フロアへ。着いた我々を迎えたのがこの光景でした。こわいよ! 思わず呆気にとられてしまいました。

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 キャプションを読むと、奥の図鑑置き場からお花を一つ選び、庭に植えよとのことだったので、小さな木の芽を選んで植えました(画像中央)。図鑑を切り取って作られたお花たち。選びながらあまりの明るさに顔を上げると、白熱電球で「CATCH AND RELEASE」と描かれていました。どこがキャッチアンドリリースやねん。お花といいつつキノコや貝殻やカエルも植わってますし、突っ込みどころの多いインスタレーションでした。これは悪口ではなく、あえて隙を用意することで受け身のままでは鑑賞できなくする、自分で関わろうとせざるを得なくする、インスタレーションらしいインスタレーションだと感じました。「お花を植えて帰った」という体験で締めくくられ、美術展ひとつ見終わった達成感のようなものも得ることができました。

 

 とても大衆向けではありませんが、ちょっと変わった目に遭いたい人にはお勧めできる展示会場でした。会期は12/14までありますので、日常に疲れた皆さんの息抜きにいかがでしょうか。

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行動展(第80回記念展・国立新美術館2025)

 国立新美術館で行われていた行動美術協会の公募展です。というのは後から検索して知ったことで、特別展のお隣で目を引いたので立ち寄りました。「私はここにいるんだぞ!」と叫ぶような熱を感じる作品ばかりで、とても満足度が高かったです。「ブルガリ カレイドス」や「時代のプリズム」を見に行く予定の方はぜひとも立ち寄って、圧倒的なパワーを浴びていただきたいです。

 

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↑『Observer/片田琉夏』

シンプルな造形なのに目を引きました。つい上の球を見上げてしまう引力があります。駅前などの待ち合わせランドマークとなったら大変頼もしそうです。
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↑『ツインボール/林宣子』

有名なカタツムリの寄生虫「ロイコクロディウム」を彷彿とさせる色使い、結合双生児を思わせる造形が見るものを不安にさせます。それなのに優しげな白い柔らかなフォルムであるギャップが印象に残りました。
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↑『トキのタネ/木村峰子』

最初あまりの温かみに「布張りの発泡スチロール彫刻かな?」と思いましたが、なんと陶! びっくりしました。触ってみたくなりました。
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↑『DANCING '25-1/山口浩之』

モビールのように風でくるくると回転していました。一部深いブルーに色付けされているのが回転を眺める楽しみを加えています。かなり長い時間眺めてしまいました。風そのものを形にしたような爽やかさがあり、ぜひ池の上などに立っていてほしい作品でした。

 

世の中には力ある美術家がたくさんいるんだな!と大変元気になりました。質が高すぎて、本当に入場無料でよかったのか心配になるくらいです。また行動展を見かけたら立ち寄りたいです。

ブルガリ カレイドス/時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010

 国立新美術館の展示を3つはしごしてきました。まずは「ブルガリ・カレイドス」と「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010」の感想を書いていきます。

 

ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧

www.nact.jp

 ブルガリの名前を知らない人はいないでしょう。香水やバッグはここ茨城でも比較的安価に手に入ります。しかしブルガリが作る芸術品レベルのジュエリーにはまったく縁がなかったので、一度目にしたくて足を運びました。

 有名ブランドの個展ということで、普段の国立新美術館の客層とやや違って新鮮でした。みなさんジュエリーを見にいらっしゃるだけあって、とてもおしゃれでもちろんジュエリーを身につけてらっしゃいました。互いに美術館慣れしていないと感じているからか、それともジュエリーショップを思わせる開放的な内装からか、感想を口にしながら和気藹々と鑑賞する穏やかな展示風景でした。

 作品の写真を撮ろうとしたのですが、古いiPhoneのカメラではうまく撮れませんでした。特に展示ガラスの反射がくせ者で、みなさん苦戦してらっしゃいました。せっかく撮影OKの展示なのにもったいなかったです。SNSでの口コミが重要度を増す昨今、低反射展示ガラスの活躍は益々期待されるところです。

 展示セクションの合間にはインスタレーションが挟まります。そちらの写真ばかりになってしまいました。

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↑(作品名控え忘れました)/ララ・ファヴァレット
色とりどりの洗車ブラシが轟音と共に回転する作品。それまで宝石ばかり見ていたので怯みました。

↑(作品名控え忘れました)/森万里子

 

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↑なんとか撮りましたがすっかりくすんでしまっています。ハイジュエリーってキャプションに作品名を書かないんですね。出さないだけなのか、つけていないのかは気になるところです。

 

 ハイジュエリーも歴史が長いだけに独特の様式美ですね。なぜこんなにもダイヤモンドをびっしり敷き詰めようと思ったのか、どうして硬いはずの石をぷるぷるの質感にしようと思ったのか、強く美しいこだわりに圧倒されっぱなしでした。

 

時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010

www.nact.jp

 タイトルの通り、1989年から2010年の日本の現代アートシーンを振り返るような特別展です。現代アートは発表された当時の社会と作者の関係も作品を読み解く重要なカギとなります。チャプターごとどんな時代だったか、どうしてこの作品たちがここに集められたか、が丁寧に解説されていてよかったです。

 ただ一方で個々の作品の解説が少なく、チャプター主旨との関係が分かりにくかったのが残念でした。図録を買うと丁寧な解説がなされているのですが、展示室に書いてほしかった、作品実物と見比べながら読みたかったと惜しくなるばかりでした。これから行くのであれば先に売店で図録を買って、手に持って入るとより楽しめるかもしれません。

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↑ベジタブル・ウェポン/小沢剛
最も印象に残った作品です。様々な国の女性が現地の野菜で作った銃を手にしています。フェミニズム運動の中には家事労働を脱出すべきものとする一派もあり悲しくなりますが、今を生きる様をそのままエンパワーメントする心地よい作品群でした。

 現代アートを愛して10年以上、詳しくなることの喜びであり悲しみであるのですが、こういった横断的な展示では既知の作者や作品を見ることが随分増えてしまいました。新しいものに出会いたい、そう思いながら入ったお隣の「行動展」が大変満足だったのですが、長くなるので別な記事に分けたいと思います。

金沢21世紀美術館【マテリアル・フィーバー/積層する時間】

中学生のとき美術の資料集で「スイミングプール」を見てから、ずっと訪れたかった美術館です。ミドサーの今やっと行ってきました。

www.kanazawa21.jp

施設・無料部分・常設展示

まず特筆すべきは美術館そのものでしょう。建物は円形で、周辺部が無料部分、中央部が有料部分となっています。建物の外も公園のようになっており、触って良い野外作品がちりばめられており、周遊性が高いです。ガラス仕切りから垣間見える有料の展示を見て「あっちに行って見たい」と言っている子供がいました。策士な建物だなぁと思います。

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↑マップ。壁に見えるところはほぼ全てガラス張りで、中央部への引力がある

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↑「雲を測る男/ヤン・ファーブル」

有料部の屋根にある彫刻だが、無料部から見上げることができる。近くで見るにはチケット購入が必要。

 

床面はフラットに作られていて、バリアフリーを意識したことが伺えます。しかしバリアフリーと呼ぶには通路ももろもろの入口も狭すぎて惜しいです。お盆休みの当日、美術館はキャパオーバーして、健常者でも移動やトイレに困難しているように見えました。

 

もちろん美術館が儲かるのはとても嬉しいことです。驚いたのはとても若い、携帯での撮影を主目的に来ている層の多さです。Instagramのユーザーと思われます。皆とてもマナーが良かったです。撮ることを旨とする彼らは、他者の撮影と鑑賞を絶対に邪魔しません。また、業界の決めた価値より視覚的な美しさを讃えるまっすぐな善い鑑賞者だと思いました。


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↑休憩や列形成用の椅子

ウサギ椅子と呼ばれ有名撮影スポットとなっているとのこと。撮影の順番待ちが沢山いました

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↑「ALTEMY PARK IN PROGRESS/ALTEMY」

期間限定展示で、館内中にスフェリコンと呼ばれる大小の謎立体がごろごろ。とはいえお盆は一見様が多く、これが転がっている違和感に気づく人は少なかったような

 

マテリアル・フィーバー

有料部の特別展です。タイトル通り物質がテーマで、特定の物質や物質の組み合わせに魅了された作者たちに焦点を当てた興味深い特別展でした。できないとされていははずのことをやりきったり、素材に習熟し見たこともない作品に仕立て上げる様は圧巻でした。

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↑「存在の痕跡/津守秀憲」

焼成点が違うはずのガラスと陶器を融合させた作品。写真にはうまく写せなかったが、見たことのない独特の艶ときらめきがある。どんな質感か触ってみたくなる。本作に限らず質感の不思議な作品が多く大満足。

 

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↑「三面鏡ではない/山崎つる子」

高さ3メートルを超えるブリキ板。なんで安定してるんだろう。ブリキに魅せられ熟知した作者だからできる巨大作品だと思った。

 

特別展「積層する時間:この世界を描くこと」

キービジュアルが穏やかな青空の風景で、どんな特別展なのかと思いきや、やや過激な反戦作品がメインでした。初っぱなから牧歌的田舎を日本軍が虐殺・レイプする動画作品で、驚いた子連れが慌ててその場を離れていました。どんなエログロナンセンスも芸術なら無罪、という時代は終わっています。覚悟できるような導入にするか、作品それぞれにレーティングを設けてもらえないと、せっかくフラットに作った美術館の構造が裏目に出て人を遠ざけてしまうと思いました。

↑特別展のキービジュアル

この見た目でエログロナンセンスを覚悟するのは無理だと思います

 

 

 

そしてお目当てだった「スイミングプール/レアンドロ・エルリッヒ」ですが、たくさんの人が集まっていたので写真は撮っておりません。プールの水面下(?!)に入れるのですが、チケットは9時販売開始で9:01にはほぼ完売でした。憧れの作品が見れたことも、それが大人気であることもうれしかったです。人が水面を覗き込んでこその「スイミングプール」だと思うので。

 

金沢21美、森美術館、直島を巡るスタンプラリー「ミュージアムリンクパス」も取得してきました。一年以内に完走すると記念品がもらえます。
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若い頃は脊髄損傷の後遺症からうまく動けず「安く入れて静かでだれも意地悪をしないから」という理由で美術館に入り浸っていました。それが今や美術館のためならお金と勇気を出して見知らぬ土地へも飛んでいくアートマニアです。初めての四国行きの計画、がんばります。