千住のコンテンツ感想ノート

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銃の家(ハギワラシンジ『魔女の空』二次創作)

※このブログは普段感想ノートですが、不意に思い立って二次創作小説を書きつけます。原作はハギワラシンジ『魔女の空』

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『銃の家』

 

 結婚生活に不満があったわけじゃない。故郷を滅ぼせると聞いて、志願せずにはいられなかった。

 お別れを言いに帰ると、彼は志願の謝礼を部屋いっぱいのビールそしてライフルに変えていた。なにそれって笑ったのに、彼は撃ってくれなかった。婚約指輪は持っていってくれと泣かれた。

 魔女になったら正気を失うと思っていた。少しだけ残った。自分がしていることなのに、まるで映画をみてるみたいだった。私を虐げた人々を殺すのは気分がよかった。小学校に押し入ったときは最高だった。脚の鈎爪で教師を引き裂いたら、口から金切声が出た。

 仲間と飛んでいたら、遠くに何かが光った。なんだろう。轟音が通った。屋根の上から誰かが狙撃しているようだ。ライフルだ。ビールの匂いだ。

 彼だ。嬉しくなった数秒後には、私の脚が腹をえぐった。私の手は彼の胸を突き抜けた。彼の脇腹が庭に落ちた。大好きだった羽のタトゥーが見えた。

 あたたかいものが触れた。彼が私の手をとっていた。今おかえりって、言ったかしら。