千住のコンテンツ感想ノート

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【異臭のSF】第六ポンプ【感想】

 ツイッターでフォローさんがオススメしていたので手にとりました。著者はパオロ・バチガルピ、数多の賞を獲っている大御所SF作家です。本作『第六ポンプ』は短編集なので、移動中の楽しみとしてゆっくり読み進めていきました。

 

 どの作品も科学が高度に発展した世界、遠未来にあるかもしれない地球の姿が描かれています。しかし物語は華々しい暮らしではなく、ハイテク高層ビルの下で這いずる被差別者にスポットされていました。糞尿、排気ガス、砂埃や薬剤の臭いがやりすぎなほど描写されています。その異臭の強調こそが、臨場感をもたらしていたと思います。

 

 遠未来の常識が、知らない単語がたくさん出て来るのに読者を置いてけぼりにしないあたりに筆者の手腕を感じます。読解に現代の科学知識が要求される部分もありますが、あまり気にせず異世界の暗部を覗きにいってもよいのではないでしょうか。

 

 「どろどろしたのが好き」なかた、本当にどろどろしているのでオススメです。

第六ポンプ

第六ポンプ