2017年上半期の直木賞作品、読み終えました。時間を忘れていっき読みしてしまいました。
ざっと粗筋を言うと、恋した男に若い姿で再会するため転生を繰り返す「瑠璃」と、彼女に翻弄される人々の物語です。
文体の素晴らしさについては昨日触れましたが、それ以上に人物の描写力が高いです。等身大の、合理的にも優しくもなりきれない、ときにいけ好かない人間の姿を、あますことなく書きだしています。
だからこそヒロイン「瑠璃」の死をも超える恋慕が、それこそ照らせば光る瑠璃のごとく際立っていました。
瑠璃は大人になるのを待ちきれず、小学生、ときに幼稚園児の姿で転生前の恋人を探しにいきます。本文でもちらと触れられていましたが、これはかなり業の深いロリコン小説ですね。業の深い、は私の中で最上級の誉め言葉です。
文学小説特有の「大人の汚さ」に耐性があるなら、一読の価値ある小説だと思います。満足度の高い読書体験でした。