千住のコンテンツ感想ノート

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【エンディングネタバレあり】ALTER EGO【感想・考察】

 自分探しタップゲーム『ALTER EGO』のトゥルーエンドを見終えました。思いっきりネタバレしながら感想を書くのでご注意ください!

 

 初見時の感想やあらすじは下のリンクから。 

senju.hateblo.jp

 

 体験版を手にしたときから「ノベルゲーム形式で性格診断をしていくのはいいけれど、エンディングはどうするつもりなんだろう?」と疑問に思っていました。ただ秘書っぽいキャラが診断をしてくれるだけでも面白いから、オチ無しなのかな?と。

 しかし予想をはるかに上回る素敵な物語が用意されていました。

 

 このゲームの登場人物は、プレイヤーをのぞいて二人です。エゴ王。エス。どこか聞き覚えのある名前。

 フロイト派の心理学は心を三つの層に分けます。自我、スーパーエゴ、そしてエス。スーパーエゴは規範や抑圧を与える部位。エスは衝動や欲望を発する部位と言われています。(雑な説明ですみません)

 エゴ王は「選択は規範に捧げよ」とエスやプレイヤーに圧力をかける、スーパーエゴの化身でした。ゲーム中のエスはその名の通り「衝動が抑えられない」とプレイヤーにぼやきます。では、自我は?

 フロイト心理学における自我はエスとスーパーエゴの発するものを聞き届けて調整するもの。このゲームの中でその役割をしているのは。そう、二人の話を聞いた上で、選択肢をタップするプレイヤーです。気付いたときにはビビッと痺れました。精神分析だけじゃない、精神の仕組みそのものにプレイヤーを巻き込む素晴らしい構成……!

 

 序盤の選択肢は規範を重視するもの、衝動を重視するもの、中庸のものの三つに分かれており、どれをよく選んだかでルートが分岐するようでした。

 

 規範を重視、つまりスーパーエゴに肩入れしたルートでは、エスはエゴ王の批難に耐えかねて自滅してしまいました。

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↑途中から探求ページにも抑圧的な台詞が目立つようになる

 

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↑エゴ王の声が思考を埋めてゆく

 

プレイヤーはエゴ王に賞賛されますがなんだか後味が悪い。消える直前にエスが放つ「私を……けて」という声で、プレイヤーはこのゲームの目的を知り、周回プレイを選びます。なんて美しい展開なんだ。

 

 

 衝動を重視、エスの好きなようにさせたルートでは真逆。エスは世界を破壊し、衝動のまま発狂してしまいます。やはり聞こえる「私を……て」の声。ただエスを肯定しただけでは、エスを救うことはできないのです。

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↑衝動のまま発される言葉たち

 

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無表情キャラって差分少なくて済む上にいざ顔変わると効果的ですごくいい

 

 

 エスを救う道は、エスの衝動を否定するでも肯定するでもない、エスの意志を尊重し、一個人として見守った先にありました。

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 ↑もう彼女は衝動の化身ではなく、一人の少女

 

「衝動のあるところに自我をあらしめよ」はキャッチコピーでありながら、ゲームの目的でもあったんですね。エスを救おうと選択を変えてみることで、最初は抑圧的な選択肢を選びがちだった筆者の自我すらチューニングされてゆくようでした。

 タイトルの『ALTER EGO』は文字通り「自我を変化させよ」という意味だったのでしょうか。変革したのはエスの自我なのか、私の自我なのか。

 

 精神診断だけでもない、物語だけでもない、ゲームだからできる絶妙なバランスでした。こういうの作りたいなぁ! 年始から素敵なゲームに触れられてよかったです。

 

alterego.caracolu.com