千住のコンテンツ感想ノート

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【終末の笛】ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

終わらないと有名だったエヴァンゲリオンが終わる、そう聞いて今更ながら序から順番に履修してみることにしました。エヴァンゲリオンのアニメは視聴しておらず、コミカライズもカヲルの登場あたりまでしか読んでいません。しかも子供の頃だったので、シンジ・綾波・アスカの揺らぐ人間関係にしか目がいっておりませんでした。しかし大人になって観ると、その世界観の奥行きにどっぷりハマってしまいました。

 

www.evangelion.co.jp

 

あらすじとしては、聖書がある程度妥当であったという世界観のもと、終末を迎えつつある人類を守るため最終兵器・エヴァンゲリオンパイロットとして少年が戦う話です。少年・シンジは序の時点ではなぜエヴァンゲリオンパイロットに選ばれたのか知らず、視聴者に明かされることもありませんでした。

 

とても見どころの多い作品です。先述した聖書的な終末感を深追いするもよし。シンジの少年らしい揺らぎを観るもよし。戦争映画としての理不尽を楽しむもよし。SF要素も多く、使徒エヴァンゲリオン、各種兵器のデザインや動きも圧巻ものでした。

 

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公式サイトでフリーダウンロードだった壁紙。使徒ではこの子が一番好きです

 

もっとも印象的だったシーンはセントラルドグマを訪れるところでしょうか。セントラルドグマは遺伝学用語で、生命の大部分はこの原則にしたがって遺伝情報を処理しているはず、という概念のことです(一部例外あり)。DNAの螺旋を思わせるような演出もあったので、扉の向こうには聖書で人間の祖とされるアダムかイブが居るものと思いました。しかし出てきたのはアダムの最初の妻であるリリス。悪女・悪魔として扱われることが多いものです。しかもそれが生命の祖であると言い出すものですから、世界がひっくり返ったように感じました。人間はイブの子ではなく悪の子である、と……。

 

イブはエバと表記されることもあり、するとエヴァンゲリオンの中に綴りを含みます。天使の別称でもある使徒エバによって退け、終末を阻止しようとしている人類の営みは本当にゆるされるものなのでしょうか? 海が血色に染まっていることからも、黙示録のラッパは二度以上鳴らされていることがわかります。七つの目の子羊(=黙示録のラッパを鳴らすもの)のロゴを携え、使徒のこともある程度以上把握している主人公の父たちは本当に人類の味方なのでしょうか?

 

一緒に観た人によると使徒にはすべて天使の名前がついており、しかし最後の審判でラッパを鳴らす「ガブリエル」は今までいなかったそうです。とするとテレビ盤では終末は阻止されたようですが、映画版では一体どうなるのか……。

 

世界観の話ばかりしてしまっていますが登場人物たちが見せる徴兵されたもの特有の「選ばされたのではなく選んだと思わざるをえない、それに誇りを持たねば心を保てない」といういつ壊れてもおかしくない悲惨の通奏低音も見事です。世界の前にいつ誰が壊れてもおかしくはない。気を休めるところが一瞬たりともない映画でした。

 

予想外にも『宝石の国』が類似ジャンルの作品で驚きましたが長くなってきたのでそろそろ閉じます。続きも早めに観て完結編に備えたいと思います。