千住のコンテンツ感想ノート

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シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 待ちに待ったエヴァンゲリオン最終章と言いたいところですが、私なんかより余程気が狂うほど待っていた人が多すぎて言いづらいです。

 

序破Qまでの感想はこちら

senju.hateblo.jp

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最終章では、世界を壊しカヲルを亡くし失意のシンジが、生き残った人間たちの暮らす村に連れられます。シンジは傷を癒し、その母親のクローンであるアヤナミレイ(仮称)は人間らしさを手に入れていきます。特殊な環境でしか生きられないアヤナミレイ(仮称)が死んでしまったのをきっかけに、シンジは再び運命と対峙します。世界をリアリティとイマジナリーの区別がないものに変えてしまおうとする父との対峙です。

 

上映時間が3時間近く、内容も濃密なので、どこの話をするか迷いますね。

 
・黙示録との関係について

エヴァQには川を苦くすると言われる星「にがよもぎ」のような物も見れたことから、ヨハネの黙示録でいう第三のラッパが鳴った状態かと思っていました。しかし「浄化を一度に済ませた」というセリフもあることから、実はエヴァQ時点で第三から第六のラッパが鳴ったと解釈していいのかなと思いました。第六のラッパが鳴ると「四人の天使が人間の三分の一を殺す」と言われているそうです。作中の人口はそれ以上に減っていたように思います。

 

最後のラッパが鳴ると「この世の国はわれらの主、メシアのものとなり」「天の神殿が開かれ、契約の箱が見える」そうです。シンジの父・ゲンドウが最後のインパクトを起こした後、シンジとマリがゲンドウを追って見た違う宇宙が天の神殿で、そこにあったゴルゴタ・オブジェクトは契約の箱のオマージュかなと思いました。ゴルゴタの丘はキリストが処刑されるため十字架を背負って向かったと言われている場所ですが、エヴァ全体が聖書がある程度妥当という設定のSFであることを考えると、超存在がそこに契約の箱を置いていったことを示すのかもしれません。

 

・ATフィールドについて

ロボットものだしバリアも出るでしょ、とスルーしていたATフィールドが、最終章にきて「エヴァが怖がっているときに出る」「ATフィールドのない世界」など急に設定を巻いてきて驚きました。シンジとの対話シーンでゲンドウは無自覚にATフィールドを張り息子を恐れる自分に気付きます。まんま心の壁だったんですね。

そうなるとエヴァパイロットが思春期で搭乗する理由もわかる気がします。一番心の壁が厚い時期ですもんね。

 

・マリについて

マリについてですが、最後にシンジを第五宇宙へ迎えにいったのがマリであることに不満がある人も見かけました。ヒロインが変わってしまったように思えたようです。

しかし私はマリが必要な役割を果たしたように思いました。作中でシンジに助けを求めていないエヴァパイロットはマリだけなのです。登場当初はマリの存在が異質に感じましたが、それは過酷な運命を無理矢理背負わされたレイやアスカと違い、自らの足で立っていたからだったようです。女性の魔性がキーであるあの作品において、異空間からシンジが自力で脱出するのも趣旨から逸れてしまうため、魔女の迎えは必要だったように思います。

 

碇ユイについて

妻ユイを求めるゲンドウによって世界が壊れる、セカイ系としての側面があったエヴァンゲリオン。回想シーンで少し姿が見えただけで、過去作を見ていない視聴者にはユイがどんな人が窺い知ることもできません。

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上映開始から一週間ほど経ったころ、劇場のポスターが差し代わっていました。中央にはゲンドウと並ぶユイの姿が。白衣のポケットに手を入れてしゃんと立つ姿の、なんと気の強そうなこと……。エヴァンゲリオンを取り巻く女性キャラの強さ、女性性への畏れのようなものを改めて感じたりしました。

 

 

あまりにも濃密な作品だったため、見るたび発見がありそうです。もう一二回は劇場で観ておきたいなと思いました。