前作「囚われのパルマ」の好評を風の噂に聞いており、セールを機に最新作を購入してみました。
ジャンルは女性向け恋愛ゲーム、形式はビジュアルノベルです。道で倒れていた青年を助けたプレイヤー(一人称視点)は、その青年チアキが関与していた事件の関係者として離島に招かれ、カウンセラーのふりをして事件の真相に迫るよう強いられます。
一日が朝・午後・夜のパートにわかれており、移動やイベントの消化で時間経過。朝と午後のパートでチアキとの話題やアイテムを回収し、夜に差し入れをおこない、翌朝に監視カメラで反応を確認すると携帯にメッセージが届いてストーリがすすむ……といったトラディショナルなノベルゲームの形式をとっています。
囚人との交流ということで携帯でのメッセージのやり取りが基本となってきます。メニュー・コマンドの機能を携帯に集約しているためチュートリアルが重く、容赦無くメタネタを入れて解説してくるため序盤の没入感はいまいちです。ただ、逆に言えば、普段ゲームをしないような人にもわかりやすい仕様です。女性向け恋愛ゲームということもあり、メインターゲットがそっちなのかもしれません。基本的にSwitch画面のタップでスマフォのように操作できるのも非ゲーマー層へのやさしさが感じられます。
すでに少し触れましたが攻略対象のチアキは事件の容疑者として囚われの身です。そしてプレイヤーに与えたれた役割は『相談員』つまりカウンセラー兼尋問官のようなもの。差し入れは一方通行、監視カメラ、申請をしないと面会ができないなど不穏きわまりない状況です。
チアキと恋愛関係になるのはティザーから自明ですが互いに「相手の信頼を勝ち得なければ」「事件の真相に迫らなければ」と思っていることが恋愛感情に置き換わっていく、そんな自然な舞台設定に舌を巻くばかりです。
CGが採用されているのはチアキ周辺だけです。そのぶん環境音と美麗な背景画に力が入れられています。 かえってチアキ以外の雑音が少なくナラティブが高まっているような気がします。チアキだけ見てればいいという感じです。
シングルヒロイン(男性ですが)だけあって、チアキのキャラ造形はとても練られていて魅力的です。隠し事がうまく、翻弄するように立ち居振る舞うため、事件の真相を探るプレイヤーを不意にはにかませてきます。緩急がすごい。
序盤だけでも体験への没入が約束されているのがひしひしと伝わってきます。女性向け恋愛ゲームはほとんど触れたことがないため、今後どうなっていくか楽しみです。