ダルそうな有能美男子が好きな知人から勧められた作品です。アニメが放送中ですが、視聴環境がなかったため原作を手に取りました。
少しネタバレありですご注意ください。
あらすじとしては、13の区からなる王国の自治組織ACCA、その監察課所属のジーン・オータスが、全区視察の任務中なにかの陰謀に巻き込まれていくというもの。最初は小さな事件の連続ですが、じわじわと国全体を動かす影が迫ってきます。
ACCA13区監察課 (1) (ビッグガンガンコミックススーパー)
- 作者: オノ・ナツメ
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2013/11/25
- メディア: コミック
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まず目を引くのはジト目が魅力的な画風です。主人公ジーン・オータスのどこか達観した風情が表紙絵からすでにたっぷり醸し出されています。他のキャラクターもデザインや表情作りが秀逸です。この卓越した画力だからこそ、組織での駆け引きという難しいテーマでの創作が可能だったように思います。外見と内心が食い違った瞬間、本心が顔に出た瞬間のゾクゾク感がたまりません。
読み始めた当初はどうしてジーンが主人公なのか? これは何の物語なのか? など疑問が尽きず、不思議な感覚でいました。ただの無関心な巻き込まれ型主人公では、物語が早々と詰みを迎えてしまうのでは、と。
しかし4巻を迎えたところで全ての理由が明るみに出ます。この物語は最初からジーンが主人公でなければいけなかった! これは近現代風の貴種漂流譚だったんだ! ネタバレ回避のためにボカしてしまいましたが、すべてがスルッと繋がってとても爽快感のある瞬間です。
それ以降、3巻までの人間関係すべてが伏線として綺麗に回収されていく様も見事でした。全員が揃っていなければ回らない物語。広く見れば大団円だけど、一抹の切なさを残すラストも圧巻でした。
一見地味なようでいて洋画のごとき華やかさのある、味わい深い物語でした。後日談も出版されているようなのでポチっておこうと思います。