千住のコンテンツ感想ノート

美術展・ゲーム・書籍等の感想

【ネタバレ注意】TENET【初見感想】

クリストファー・ノーラン監督による最新作です。あまり映画は見ないけれど一番好きなのは『インセプション』、次が『メメント』をあげるくらいファンである自分は、公開最初の週に見に行きました。パンフレットをじっくり読んでから感想を書きたくて、ちょっと時間がかかってしまいました。

 

そうそう、これからTENETを観る人にぜひオススメしたいのは、パンフレットの購入です。40ページもあるパンフレットは設定資料集であり、ギミックの解説や時系列順にシーンを整理したものが載っています。難解と評判であるこの映画をより味わうため、900円で手に入れていただければと思います。

 

***ここから先はネタバレありで感想を書きます***

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ジャンルはSFとスパイ。あらすじとしては、特殊部隊員である名もなき男が第三次世界大戦の阻止という極秘ミッションを与えられる物語です。初めは観客と同じくらい訳がわからないまま進むしかない主人公ですが、いずれ時間を逆行する技術と出会い、本当の敵は「時間の流れを逆転させて過去に住もうとする未来人」であることがわかります。

 

何よりの見所は時間を順行する人間/物体と逆行する人間/物体が入り乱れるアクションシーンの数々でしょう。監督は「映画でしかできない体験」にこだわっているそうですが、まさに時間を逆行する敵との戦闘シーンや、先を読み逆向きに走ってくる車とのカーチェイスなどはゲームや演劇では見られないものです。

 

いま目の前の人物が順行か逆行かわからなくなってしまいそうなものですが、酸素マスクが逆行のサインとして強く機能していたため、思ったより混乱しませんでした。ポスターの時点でかなり目立っていた酸素マスク。てっきり生物兵器でも出てくるのかと思いきや、時間を逆行するのは自分だけなので空気を吸えない、というギミックに使われるとはまったく予想外でした。そしてその仕掛けが、未来人が時間を逆転させて過去に住もうとすれば、過去で時間を順行するあらゆる動植物の死は免れられないという大仕掛けに繋がってきます。

 

中に入った人間の時間を逆行させる装置「回転ドア」を使うところが見た目通り映画の折り返し地点で、以降SF映画の色彩が強くなります。しかし時間逆行にたどり着くまでの、主人公が各国で闇の重鎮を訪ね歩くスパイ映画部分もかなり難解で、ほんとうは4時間かかる映画なのではと思うほどでした。時間を逆行する銃弾を紹介する研究者が「考えないで、感じて」と言うシーンがありますが、あれは主人公と同時に観客へのメッセージであったように思います。

 

こうも難解なギミックを使うとそれを見せるだけの映画になってしまいそうですが、ちゃんと人間ドラマが味わい深いのもさすがの名監督です。特にどこかつかみどころのない甘口イケメンのニールがすばらしい。そのつかみどころのなさが深い情ゆえと分かるラストシーンでは背筋がしびれました。もう一度観るならニールのために、と思う人は少なくないでしょう。私もすっかりその一人です。

 

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